透析を必要とするHIV陽性者の受け入れに関する調査の結果概要について
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HIV感染症は慢性感染症ですが、近年の抗HIV療法の進歩により、HIV陽性者の予後が改善された結果、早期治療を開始した方は、非感染者と同等の生活を送ることができるようになりました。
一方で、HIV陽性者の高齢化や、高齢化に伴う合併症の発症等の新たな課題が生じており、HIV陽性者が長期に療養生活を送れるような環境整備が必要となっています。特に、糖尿病等の合併症により腎機能が低下し、人工透析を必要とするHIV陽性者の増加が見込まれています。
地域の身近な医療機関で維持透析を受けられることが、透析を要するHIV陽性者の長期療養体制の整備に資するものと考えています。
そこで、エイズ診療拠点病院と透析を実施する医療機関との円滑な診療連携を推進するため、東京都内の透析を実施する医療機関及びエイズ診療協力病院を対象に、透析を必要とするHIV陽性者の受け入れに関する調査を実施しました。
なお、この調査は平成23年2月に実施した同名の調査からの追跡調査として実施したため、平成30年度調査で新たに加えた3問を除いて、経年で比較することとしました。
調査状況(調査結果概要1頁)
(1)調査テーマ・期間・方法について
調査テーマ
透析を必要とするHIV陽性者の受け入れに関する調査
調査期間
平成30(2018)年7月23日から平成30(2018)年8月3日まで
調査方法
透析を実施している診療所及び病院、エイズ診療協力病院の合計493か所(※)に、郵送にて調査を依頼。
(※)透析を実施している診療所及び病院については、医療機関案内サービス「ひまわり」に掲載されている情報のうち、血液透析、夜間透析、腹膜透析(CAPD)のいずれか1つ以上を実施している医療機関とした。なお、エイズ診療協力病院については、「ひまわり」上で透析の実施を確認できなかった病院についても調査を依頼した。
(2)調査対象別の配布数・回収数及び回収率について
平成30年度調査では、回答数は340件、回答率は69.0%であり、平成22年度調査時と回答数・回答率ともに大きな差はなかった。
平成22年度 | 平成30年度 | |||||
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配布数 | 回答数 | 回答率 | 配布数 | 回答数 | 回答率 | |
診療所 | 271 | 193 | 71.2% | 295 | 203 | 68.8% |
病院(エイズ診療協力病院を含む) | 198 | 144 | 72.7% | 198 | 136 | 68.7% |
(再掲)エイズ診療拠点病院 | 42 | 38 | 90.5% | 44 | 39 | 88.6% |
不明 | 0 | 1 | ||||
合計 | 469 | 337 | 71.9% | 493 | 340 | 69.0% |
透析の実施状況(設問2)(調査結果概要2頁)
平成22年度調査時と同様に、8割弱の施設で外来の維持透析に対応している。
医療機関種別では、エイズ診療拠点病院のうち維持透析に対応している病院の割合は、平成30年度調査では43.6%となり、平成22年度調査時と比較して9.4ポイント上昇した。
平成22年度 | 平成30年度 | |||
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回答数 | 割合 | 回答数 | 割合 | |
無床診療所 | 156 | 89.7% | 160 | 86.0% |
有床診療所 | 17 | 89.5% | 17 | 100.0% |
病院(エイズ診療協力病院を含む) | 89 | 61.8% | 93 | 68.4% |
(再掲)エイズ診療拠点病院 | 13 | 34.2% | 17 | 43.6% |
合計 | 262 | 77.4% | 271 | 79.7% |
※外来のみ実施している医療機関において導入・維持の両方が可能な場合は、「1導入と維持の両方」にカウントしている。
※平成30年度の合計には、医療機関種別無回答の施設の回答も含む。
肝炎患者の受け入れについて(設問5)(調査結果概要3頁)
平成22年度調査時と同様に、透析を実施している施設のうち9割以上で、B型肝炎又はC型肝炎患者を受け入れた経験がある。
平成22年度 | 平成30年度 | |||
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回答数 | 割合 | 回答数 | 割合 | |
無床診療所 | 152 | 96.2% | 159 | 95.8% |
有床診療所 | 16 | 94.1% | 13 | 76.5% |
病院(エイズ診療協力病院を含む) | 114 | 94.2% | 111 | 92.5% |
(再掲)エイズ診療拠点病院 | 29 | 100.0% | 32 | 97.0% |
合計 | 282 | 95.3% | 284 | 93.4% |
※設問2で「透析に対応していない」施設を除いた割合。
※平成30年度の合計には、医療機関種別無回答の施設の回答も含む。
HIV陽性者の受け入れについて(設問7)(調査結果概要3頁)
HIV陽性者を受け入れた経験がある医療機関は、施設数・割合ともに平成22年度調査時から2倍以上となった。いずれの機関においても、肝炎患者に比べると、HIV陽性者の受け入れ経験がある施設は少なかった。
平成22年度 | 平成30年度 | |||
---|---|---|---|---|
回答数 | 割合 | 回答数 | 割合 | |
無床診療所 | 7 | 4.4% | 20 | 12.0% |
有床診療所 | 1 | 5.9% | 1 | 5.9% |
病院(エイズ診療協力病院を含む) | 16 | 13.2% | 30 | 25.0% |
(再掲)エイズ診療拠点病院 | 14 | 48.3% | 20 | 60.6% |
合計 | 24 | 8.1% | 51 | 16.8% |
※設問2で「透析に対応していない」施設を除いた割合。
HIV陽性者の受け入れ経験のない医療機関における今後の受け入れ意向について(設問9)(調査結果概要5頁)
HIV陽性者の受け入れ経験がない医療機関においては、「受け入れることは難しい」との回答割合が47.0%であり、平成22年度調査時より17.6ポイント減少した。
平成22年度 | 平成30年度 | |||
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回答数 | 割合 | 回答数 | 割合 | |
無床診療所 | 106 | 69.3% | 70 | 47.9% |
有床診療所 | 11 | 68.8% | 8 | 50.0% |
病院(エイズ診療協力病院を含む) | 60 | 57.1% | 40 | 44.4% |
(再掲)エイズ診療拠点病院 | 4 | 26.7% | 3 | 23.1% |
合計 | 177 | 64.6% | 119 | 47.0% |
※平成30年度の合計には、医療機関種別無回答の施設の回答も含む。
透析を要するHIV陽性者の受け入れ経験がない医療機関が、今後も「受け入れることは難しい」と回答した理由について(設問10)(調査結果概要5頁)
医療機関種別で回答割合の高い3項目については、割合の高いものから順に以下のとおりであった。上位3項目については、平成22年度調査時と同じであったが、順序については、平成22年度調査時と2番目と3番目の選択肢が逆になった。
平成22年度(n=177) | 平成30年度(n=119) | ||
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理由 | 割合 | 理由 | 割合 |
HIV陽性者専用のベッドが確保できない | 75.1% | HIV陽性者専用のベッドが確保できない | 68.1% |
透析中に急変した際のバックアップ体制が得られるのか心配 | 58.8% | HIV陽性者への対応手順が整理されていない | 53.8% |
HIV陽性者への対応手順が整理されていない | 52.0% | 透析中に急変した際のバックアップ体制が得られるのか心配 | 48.7% |