有毒魚の毒成分
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魚介類の中には有害な物質を含有し、食べると健康被害をもたらすものがいます。
主な毒成分は次のとおりです。
過剰ビタミンA
含有魚介類:イシナギ
ビタミンAは人間にとって不可欠な栄養素ですが、脂溶性のため排せつされにくく、過剰に摂取すると健康被害をもたらす場合があります。
ビタミンAを大量に含んだイシナギの肝臓を摂取すると、食後約30分から12時間で、激しい頭痛、嘔吐、発熱、顔面のむくみ等の症状が起こります。
約1ヶ月にわたり、手足などの皮がむける特異な症状を現すこともあります。
シガテラ毒
含有魚介類:バラハタ、ギンガメアジなど
シガテラとは、熱帯及び亜熱帯海域の主としてサンゴ礁の周りに生息する魚類の摂取によって起こる致死率の低い食中毒の総称です。
シガテラ毒の毒素をつくるのは、プランクトン(渦鞭毛藻(うずべんもうそう)G.toxicusの一種)です。
このプランクトンが付着した海草を食べることで、海草を食べる魚に毒が蓄積されます。
さらに、毒の蓄積した海草を食べる魚を、魚食性の魚が食べることで、その筋肉や内臓にシガテラ毒が蓄積されます。
これらの毒が大量に蓄積された魚を人が食べるとシガテラ中毒を起こします。
シガテラ中毒の主な症状は、下痢、おう吐、関節痛、倦怠感などで最も特徴的な症状として、温度感覚の異常があります。
これは、患者が水に手を入れるとドライアイスに触れたときのように、また温かいものに触れると冷たいものに触れたときのように感じるもので、ドライアイス・センセーションと呼ばれます。
重症の場合には、全般的な筋肉運動調節異常、麻痺、痙攣がひどくなり、昏睡、最後は死に至ります。
シガテラによる致死率は低いですが、回復が遅く、完全回復には数ヶ月を要することもしばしばあります。
テトラミン
含有魚介類:ヒメエゾボラ、ヒメエゾボラモドキ
深い寒海に生息する肉食性巻貝ヒメエゾボラ、エゾボラモドキなどを食べて、しばしば食中毒が発生しています。
食後30分後くらいで発症し、頭痛、めまい、しびれなどの神経症状を起こすことがあります。ただし、死亡例はなく、2~5時間で回復します。
毒はテトラミンという一種のアミンで唾液腺に局在、常在します。
ヒメエゾボラなどは、歯舌(やすりと呼ばれています)で他の貝の殻に穴をあけ、唾液腺中のテトラミンを貝に注入し、テトラミンによって麻痺させた後に食べます。
ワックスエステル
含有魚介類:バラムツ、アブラソコムツ
アブラソコムツ、バラムツなどの魚は筋肉中に大量のワックス(ロウ)を含んでいます。このワックスを大量に食べると消化できないため、食後18時間から56時間で腹痛や下痢、皮脂漏症などを起こします。
下痢便は特有の悪臭があり、ひどい場合には脱水症状を起こすこともあります。
その他オオメマトウダイにもワックスエステルが含まれていますが、乾製品、塩漬等加工用としての販売は認められます。
リン脂質
含有魚介類:ナガヅカ
卵巣中にディノグネリンと呼ばれるリン脂質が含まれ、30~50グラムの摂取で食中毒を起こします。
中毒症状は食後約2時間で腹痛(胃痛)、吐気、おう吐、その後下痢、じんま疹、全身違和感、倦怠感、脱力、めまいなどがあります。
パリトキシン毒、パリトキシン様毒
含有魚介類:アオブダイ、ソウシハギ
潜伏時間は概ね12から24時間と長く、主症状は筋肉痛、関節痛、ミオグロビン尿症、麻痺・痙攣等があります。
重症化すると、呼吸困難や死亡に至ることもあります。
油脂
含有魚介類:ホシゴマシズ、ゴマシズ
当該魚の油脂成分が原因と疑われていますが、毒性についてはまだ明確ではありません。