院長あいさつ
ごあいさつ
東京都監察医務院は、東京都23 区において死因の明らかでない急性死や事故などで亡くなられた方々の検案、解剖を行い、その死因を究明しています。また、この業務を通して、正確な死因統計の集計、臨床医学や予防医学、司法領域に寄与するとともに、医療関係者の教育や社会の安寧秩序の維持に貢献しています。
昭和21 年の監察医業務開始以降、令和5年末までに扱った検案件数は63万件を超え、このうち解剖件数は16万件を超えております。
近年、検案件数が急増しており、令和4年以降毎年1万6千件を超える状況となっております。一方で解剖件数は平成22年をピークに徐々に減少しており、令和3年には2千件程度となりましたが、検案数の急増と相まって増加傾向に転じております。
65歳以上の高齢者の検案件数の割合は7割を超えており、一人暮らしの高齢者の検案件数は高齢者全体の5割を超えております。高齢者の検案件数の実績は、年により増減があるものの、高齢者人口、高齢単独世帯の増加が反映され、今後も更に増加傾向が続くものと考えられます。
当院の検案や解剖で得られたデータは、疾病予防や事故防止など公衆衛生の向上に役立てていただくよう関係機関に提供しています。特に近年は夏期における熱中症による死亡数が多くなっており、報道機関や自治体等に情報提供することで、熱中症防止の啓発に貢献しています。また、届出対象となる感染症の発生情報を速やかに保健当局に報告するなど、感染症対策にも寄与しています。さらに、コロナ禍による影響はあったものの、都民の方向けの公開講座の開催、監察医の養成、補習教育に資するための医学生等の研修や実習の受入れなど、今後とも医学研究や教育に貢献してまいります。
令和2年4月に死因究明等推進基本法が施行され、国及び地方公共団体等は死因究明等に関する施策を総合的かつ計画的に推進することとされました。令和6年7月には死因究明等推進計画の変更が閣議決定されましたが、依然として死因究明等を行う体制については地域差があり、監察医制度がない地域では死因究明を行った結果の分析や考察が迅速かつ充分に行われにくい状況にあります。日本全国で人の死を万人の生に繋げられるような体制を築くための模範となるように、当院の体制強化、多摩地域の検案・解剖体制の確保、死因究明によって得られた情報の収集と統計に関してホームページを用いて迅速に発信する等、引き続き取り組んでまいります。
多死社会を迎え、死者の尊厳を守り公衆衛生の向上を図るために当院の果たすべき役割は益々重要となっていることを認識し、私ども職員一同、死者に対し尊厳、礼意をもち、これまで以上に高い水準の死因究明に努めてまいります。今後とも皆様のご理解とご協力をお願い申し上げます。
東京都監察医務院 院長 林紀乃
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