リハビリテーションについて

脳卒中のリハビリテーション医療について

脳卒中は、急性期診療で救命できた後であっても、麻痺やてんかん、高次脳機能障害など様々な後遺症が残ることがあります。
後遺症を軽減し、療養生活の質を高めるためには、急性期から回復期、生活期に応じたリハビリテーション医療の実施が有効です。
急性期のリハビリテーション医療では、基本的には発症から48時間以内に開始することが望ましいとされ、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士による専門性の高い治療をリハビリテーション科専門医の処方で開始する必要があります。
回復期のリハビリテーション医療では、病期の治療から障害に対する治療に移ります。症状の更なる改善に加え、家庭復帰や復職に向けた訓練などを開始します。
生活期のリハビリテーション医療は、自宅における生活を軸に、通所施設やかかりつけの医師と協力して、自立した生活ができるように継続したリハビリテーション治療を計画することが大切です。

心血管疾患のリハビリテーション医療について

心血管疾患では、心不全等で入退院を繰り返す患者が増加しています。再発・再入院を予防する観点から、運動療法だけでなく、患者と家族への教育、カウンセリング、栄養・食事指導、服薬指導、生活指導などを含めた包括的な患者支援を行うことが効果的です。これを心臓リハビリテーションといいます。

心血管疾患に対して治療している方や手術直後の方は、心臓の働きが低下し、運動能力やからだを調節する働きが低下しているため、退院後すぐに強い活動はできません。
心臓リハビリテーションでは適切な運動処方に基づいた運動を行うことで、体力を回復させていくとともに、どのくらいの強度の活動ならできるのかを学んでいくことが重要です。
再発防止のために動脈硬化の進行を防止することを目的とした食事指導や禁煙指導も行います。

運動療法
 慢性心不全の予防と管理

<参考文献>

日本リハビリテーション医学教育推進機構『総合力がつくリハビリテーション医学・医療テキスト』2020.pp450-471.

退院後のリハビリテーション

身体機能の回復・維持(心臓の場合は、再発や急性増悪)のために、退院後もリハビリテーション治療を続けましょう。
発症からの期間、後遺症の種類、年齢、障害者手帳の有無などにより利用できるリハビリテーション治療が異なるため、退院前に病院で相談しておきましょう。

介護保険によるリハビリテーション

要介護度により受けられるサービスは異なります。ご不明な場合は、担当のケアマネージャーや、地域包括支援センターにお問い合わせください。

通所リハビリテーション(デイケア)

日帰りで医療機関や介護老人保健施設などに通い、機能回復の訓練を受けます。

訪問リハビリテーション

理学療法士や作業療法士、言語聴覚士などが自宅を訪問し、心身機能の維持・回復のためのリハビリテーションを行います。

障害福祉サービスによるリハビリテーション医療

※対象かどうかは区市町村の障害福祉担当窓口にお問い合わせください。

自立訓練(機能訓練)

障害者支援施設若しくは障害福祉サービス事業所において、又は自宅において、理学療法、作業療法その他必要なリハビリテーション治療、生活等に関する相談及び助言その他の必要な支援を行います。

医療保険によるリハビリテーション医療

参考情報

動画(掲載準備中)

【注意点】 運動を行う際には転倒に充分お気をつけください。
また運動に伴う制限(心疾患や呼吸器疾患、運動に伴う痛みがある方)がある方は主治医や理学療法士にご相談ください。

リハビリテーション医療に関わる専門職について

脳卒中、心血管疾患のリハビリテーション医療にはさまざまなスタッフが関わっています。軸となる4つの専門職についてご紹介します。

リハビリテーション科専門医

医師の中でもリハビリテーション医学会において専門医を取得している医師をリハビリテーション科専門医といいます。リハビリテーション科専門医は、あらゆる臓器の疾患、障害に関するリハビリテーション医学・医療を専門とし、すべての医学領域の情報を踏まえた適切な判断のもと、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士に指示を出します。症状の変化を捉えながら適切な社会保障サービスについてのアドバイスが行なえます。

理学療法士(PT)

理学療法士は、患者さんの関節可動域・筋力・持久力・痛み痙縮などの心身機能の改善や基本的な動作や歩行の能力判定を行い、その結果に基づいた適切な治療やサポートやアドバイスを行います。

作業療法士(OT)

作業療法士は、主に日常生活に即して患者さんの認知機能や身体機能、食事動作・入浴・排泄といった様々な活動や行為、参加を促すために治療やサポート、アドバイスを行います。

言語聴覚士(ST)

言語聴覚士とは、会話や発声、嚥下(えんげ/食べ物を飲み込めない)障害などのある患者さんに、言語・聴覚・摂食嚥下機能といった機能改善やコミュニケーション能力に関するサポート、アドバイスを行います。

<監修>
安保 雅博(東京慈恵会医科大学附属病院副院長、リハビリテーション科 主任教授・診療部長)