みなさんは定期的にがん検診を受けていますか? 60
代はがんになる人の割合が増えるにもかかわらず、東京都の調査結果(※1)によると60
代女性のがん検診受診率が特に低い傾向にあります。日本人のおよそ2人に1人はがんになると言われていますが、早期治療による5年後の生存率は90%以上(※2)です。初期のがんはほとんど症状がなく自分では気づきにくいことから、定期的にがん検診を受診して早期発見・早期治療に努めましょう。
東京都では、俳優・経営者・研究者として活躍するいとうまい子さんに、胃がん検診を受診いただき、インタビューを実施しました。
今年の8 月で60
歳になり、まさに人生の節目を迎えたいとうさん。同世代の女性代表として、皆さんにがん検診の大切さを伝えます。ぜひご覧ください。
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※1 令和2年度
健康増進法に基づくがん検診の対象人口率等調査(東京都福祉保健局)
- ※2 がんの統計2022(公益財団法人がん研究振興財団)
密着!胃がん検診レポート
区市町村のがん検診受診までの流れ
- 1. 区市町村からのお知らせが届く
- 2. 指定の方法で申し込む
- 3. がん検診を受診
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4. 約1か月後に結果通知
→ 結果が「要精密検査」だった場合は、必ず精密検査を受けてください。
結果に異常がなくても定期的な検診受診が大切です!
がん検診は職場や人間ドックなどでも受診することができます。
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区市町村のがん検診担当部署一覧
区市町村から届くがん検診のお知らせについて
前日からリラックスして臨んだ検診
区市町村からの「がん検診のお知らせ」を持参して受付へ。ファイルを受け取ったら、早速検査へ。別室で検査着に着替えます。
前日から全く緊張していなくて、仕事や予定もセーブすることなく臨みました。前日から食事制限はありましたが、検診の2時間前までは少量であればお水も飲めますし、普段通りに過ごすことができましたね。
胃部エックス線検査って、意外とあっという間…?
胃を膨らませる炭酸ガスを発生させる発泡剤を口に含んでから、バリウムを飲みます。その後は検診台に横たわり、身体を仰向けやうつ伏せにしたり、左右に回転させたりして胃の粘膜にバリウムを付着させていきます。撮影技師のOK
が出たら、検査は終了です。
バリウムの量は、思ったよりも少なかったです。担当の方が、「一気に飲まなくても少しずつで良いですからね」とおっしゃってくれたので、無理なく飲ませていただきました。ゲップをしたくなるのですが、胃の中の状況が見られなくなってしまうから我慢。すると担当の方が、「ゲップをしそうになるのはみんな同じなので、焦らずに唾液を飲んでみてください。」と言ってくださいました。ただ声をかけてくれるだけでなく、どういう風にその場を乗り越えたら良いかを事細かに説明してくださるので、不安なく臨めました。
検診台の上では途中からは自力で体位を変えるので、終わった時の達成感はありましたよ(笑)。検査に集中しているとゲップのことを意外と忘れてしまうものですね。それぞれのステップはあったけれど、一連の流れで考えるとあっという間に感じました。
温かく見守られて終了!やはり受けて良かった
担当の方だけでなく、説明をしてくれた撮影技師の方も、皆さんが終始優しく声がけしてくださったので、気持ちよく終えることができました。結果は、何事もなければ不安も消えるし、がんがあっても早期発見できる可能性が高いので、定期的に受けるに越したことはないですよね。
家族を失った悲しみと早期発見の大切さ
家族を亡くした経験を乗り越えて
私が一番身近にがんを感じて、がんへの意識が芽生えたのは家族ががんになったことがきっかけだと思います。大学のゼミでロコモティブシンドローム(※)を学んでいた時に、父ががんになり、最終的には歩けなくなってしまったんです。がんが見つかった時はもう手術もできない状況で、余命2
年と言われ、本当に2
年で亡くなってしまいました。研究で、病気を予防することの大切さを学んでいたからこそ、親の状況に立ち会ったときに、若いうちから健康に気をつけることの大切さを改めて痛感しました。
※ロコモティブシンドローム(運動器症候群):
加齢に伴う筋力の低下や関節や脊椎の病気、骨粗しょう症などにより運動器の機能が衰えて、要介護や寝たきりになってしまうこと。また、そのリスクの高い状態のこと。
がんを乗り越えた友から学んだこと
がんの早期発見は最重要ポイントだと思います。私の友人もがんになりましたが、早期発見だったので、身体に負担の少ない治療で済み、回復することができました。やはり『定期的ながん検診と早期発見の大切さ』を、友人を見ていて感じました。少し遅れていたら、取り返しのつかないことになっていたかもしれません。その後、母も肺がんで亡くしたことや、大学での研究を長年積み重ねていくことで、自分の健康への意識を深めていきました。
同世代の友人とは「階段を上っている時、足の上がりが悪くなっちゃうのよね」というような話は明るく話題にできるのに、がんや検診について話すことはあまりないように思います。年齢が高まるにつれてがんになる人の割合が増えるということもあるので、お互い自分のこととして捉えるためにも今度話してみようと思いました。
国が推奨する5つのがん検診について
区市町村では、国が推奨する5
つのがん検診(胃がん・肺がん・大腸がん・乳がん・子宮頸がん)を実施しており、それぞれ各区市町村が指定する検診機関や医療機関などで受診できます。検診にかかる費用を区市町村が負担していることから、無料または少ない自己負担額での受診が可能です。今回、胃がん検診を受けていただいたいとうさんと一緒に、それぞれの検診についてみていきましょう。
胃がん検診
問診と、バリウムによる胃部エックス線検査か内視鏡(胃カメラ)検査のどちらかを受けます。対象者は50歳以上で、受診間隔は2年に1回です※。
※当分の間、胃部エックス線検査を40
歳以上の方に年1回実施しても差し支えないとされています。
いとうさん:検査方法は2種類あるんですよね。今回はバリウムによるエックス線検査でしたが、内視鏡検査も受けたいです。
肺がん検診
質問(問診)と胸部エックス線検査を行います。対象者は40
歳以上で、受診間隔は年1回です。(喫煙者の場合、質問(問診)の結果、必要と判断された50歳以上の方には、喀痰細胞診を行います。)
いとうさん:健康診断などにも用いられる胸部エックス線検査です。とてもシンプルなステップですよ。
大腸がん検診
問診と便潜血検査を行います。便潜血検査は、自宅で2
日間、便を採取し提出します。対象者は40歳以上で、受診間隔は年1回です。
いとうさん:検便はこれまで何度も行ってきましたが、簡単なので気軽に受けやすいと感じます。
乳がん検診
質問(問診)と乳房エックス線検査(マンモグラフィ)を行います。対象者は40歳以上で、受診間隔は2年に1回です。日頃から自分の乳房を知り、変化がないかチェックする生活習慣(ブレスト・アウェアネス)も大切です。
いとうさん:普段から自分で胸の状態を確認するようにしていたけど、定期的に検診を受けて結果を確認することが大切だと思いました。
子宮頸がん検診
※細胞診の場合
問診、視診、子宮頸部の細胞診および内診を行います。対象者は20歳以上で、受診間隔は2年に1回です。
いとうさん:子宮頸がんはとりわけ症状に気付きにくいから、本当に検診の大切さを感じます。
検診を受けて、伝えたいメッセージ
人生100年時代を楽しく生きるために
今私が抱いている目標は、高齢者の健康寿命と寿命が一緒になって、人生を楽しく全うできる社会を実現すること。高齢者が独居になるのではなく、コミュニティを作って皆で楽しくいられる仕組みづくりを目指しています。その目標を叶えるためには、私自身が健康でいなくてはいけませんし、がん検診を受けて早期発見・早期治療につなげる、ひいてはがんにならない生活を送ることも大事ですよね。がんは発見が早ければ早いほど助かる可能性が高まるので、皆さんも、迷うくらいならがん検診へ行って、いつも健康な身体を維持してほしいです。
周りの大切な人のことを思って、定期的にがん検診を受けていただきたいと思います。
私も60
代に差し掛かり、がんになる人が増える年代になったので、「まだ大丈夫」と思わずに、これからもきちんと検診を受けていきたいと感じます。今回も胃がん検診を受診したことで、とても大きな安心を得られましたよ。日々の生活に追われて、検診を後回しにしてしまいがちですが、人生100
年時代を楽しく生きるためには、定期的にがん検診を受けることが大切なのだと改めて感じました。
おわりに
がん検診のメリット・デメリット
がん検診には、早期発見・早期治療により命を守ることができるという大きなメリットがあります。がんを早期に見つけることで、治療が容易になって身体への負担も少なくなり、検診で「異常なし」と確認されると安心感が得られるのも良い点でしょう。一方、デメリットとしては、がん検診でがんが100%見つかるわけではないため、がんを見逃してしまうこと(偽陰性)があります。また、がんがないのに「がんの疑い」と判定されてしまうこと(偽陽性)や、生命に影響のないがんを見つけてしまうこと(過剰診断)により、不必要な治療や検査が行われることがあり、身体的・経済的負担だけでなく精神的負担がかかることなども考えられます。
ただ、区市町村が行うがん検診は、精度管理によりデメリットが最小限になるように取り組まれています。定期的に検診を受けて、がんから命を守りましょう。
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がん検診の目的とその利益(メリット)・不利益(デメリット)
高齢者のがん検診について
がん検診をきっかけに体に負担のある検査や治療が行われることもあります。特にご高齢の方の場合は、ご自分の想定よりも体力の予備能が乏しいので、がん検診の受診についてかかりつけの医師へご相談ください。
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高齢者のがん検診について
監修:地方独立行政法人東京都立病院機構 東京都立がん検診センター所長 入口陽介
撮影協力:公益財団法人東京都予防医学協会