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子宮頸がん検診の結果が「要精密検査」だったときのこと、お医者さんに聞いてみました。

結果を受け取ったらどうすれば?
どんな検査をするの?
全部わかりやすくお伝えします。

(監修及び解説)
国際医療福祉大学三田病院 予防医学センター 講師
医学博士 齊藤 英子

登場人物
長女
メグル(31歳)

しっかりもので
少し天然なお姉さん。
実家を出て彼氏と同棲中。

次女
ショーコ(28歳)

豪快な性格のキャリア女子。
一人暮らしで不摂生しがち...?

三女
アスナ(24歳)

本を愛する書店員。
実家暮らし。
大人しめだが芯は強い。

四女
エイミ(20歳)

天真爛漫な末っ子大学生。
実は一番空気が読める。

子宮頸がん検診の結果が「要精密検査」だったときのこと、お医者さんに聞いてみました。

アスナ:

はあ…。

エイミ:

アス姉、ため息ついちゃって、どうしたの?

ショーコ:

お姉ちゃんたちに話してみなさいよ。

アスナ:

あのね、これ…

メグル:

子宮頸がん検診の結果?えーと、「要精密検査」…。

アスナ:

昨日通知が来てて…。びっくりしちゃって…。

ショーコ:

そっか…。でもさ!女子けんこう部で知ったよね?「要精密検査」はイコールがんじゃないって。

アスナ:

うん。わかってるつもりなんだけど、いざ「要精密検査」って言われると…不安だよ~、ショーコ姉…。

メグル:

私たちがついてるからね。でも、不安なままでいるのは辛いわよね…。

エイミ:

そうだ!こういうときこそ、ちゃんと知っておけば、こわくないよ!お医者さんに、みんなで聞きにいこう!ね?アス姉!

アスナ:

うん…!そうだね!

検査結果が「要精密検査」だったら?

メグル:

ということで、子宮頸がんの専門医、齊藤英子先生にお話を伺いに来ました。先生、早速ですが、色々と教えてください。

アスナ:

先日受診した子宮頸がん検診で、「要精密検査」の結果を受け取って… どうすればいいのか、改めて知りたいです。

齊藤先生:

はい、まずお伝えしたいのは、「要精密検査のひとが全員がんというわけではない」、ということです

ショーコ:

ふわっとそのことは分かっているのですが…。具体的にはどういう状態なんでしょうか?

齊藤先生:

がん検診は「精密検査が必要な人(要精密検査)」と「精密検査の必要がなくて、2年後の検診を受ける人(精密検査不要)」に分けるまでが仕事です。子宮頸がん検診だけで、子宮頸がんと決まることはありません。

そして、子宮頸がんの特徴は「がん」だけでなく「前がん状態」があって、検診で見つかるものの中には「前がん状態」が多く含まれるんですよ。つまり、
「要精密検査」と判定された場合は、「がんの疑いがある」と「『前がん状態がある』可能性がある」という状態です。
前がん状態はCIN(シーアイエヌ)と呼ばれ、精密検査では、がん以外にCINが数多く診断されています。

都内の20~30歳代の女性で精密検査を受ける人が100人いるとき、そのうち子宮頸がんであるのは1人(1%)程度であると報告されています。ですから色々心配し過ぎる前に、まず精密検査を受診することが重要です。(図1)

図1「要精密検査」になった方のうち、異常なし、がんになる前の状態(CIN1~3)、子宮頸がんである人の割合
※その他異常あり・判定不能が15人、未受診・未把握が27人いるため人数不一致
※人数は平成30年度に都内の子宮頸がん検診で要精密検査となった20歳代~30歳代の人を100人とした場合の割合です。
出典:令和元年地域保健・健康増進事業報告
エイミ:

100人に1人…!少しだけホッとする数字かも…。

アスナ:

この、「CIN」と診断される場合もあるんですよね。そう診断されたらどうなるんでしょうか?

齊藤先生:

CINとは、下の図のとおり、がんになる前の前がん状態で、CIN1(軽度異形成)、CIN2(中等度異形成)、CIN3(高度異形成・上皮内がん)の3段階に分けて診断しています。(図2)

何も病気がない方が急に子宮頸がんになるとは考えにくく、CIN1→CIN2→CIN3→子宮頸がんと順を追ってゆっくり時間をかけて進んでいくと考えられています。

図2 がんになる前の状態からがんへの進行の図解
出典:国立がん研究センター がん情報サービス→日本婦人科腫瘍学会編「患者さんとご家族のための子宮頸がん・子宮体がん・卵巣がん治療ガイドライン第2版(2016年)」(金原出版)より作成
齊藤先生:

前がん状態である CINが、がんと大きく違う点は、全例ががんになるわけではなく、そのままの状態に留まり続けたり、自然に治ってしまう場合がある点です。

例えば、CIN1では10%程度が、CIN2では20%程度がCIN3に進行し、さらに、CIN1では1%程度が、CIN2では5%程度ががんに進行するといわれています(図3)。

ショーコ:

必ずしもがんに進行するわけではないんですね。

齊藤先生:

そうなんですよ。そしてCIN1やCIN2の場合は、病気が進んでいないかどうか確認するために、精密検査ができる施設で精密検査を繰り返す経過観察(通院)が必要です。

精密検査で経過観察の通院を続けて異状がなくなり、医師から「検診に戻ってよい」と許可がでれば、また2年に1回の検診を受けていただきます(図4)。

一方、CIN3になった方では、長い期間では30%程度ががんに進行する可能性があるといわれているため、基本的には治療をすることになっています。

図3 子宮頸がんの自然史について
出典:Östör Andrew G. Natural history of cervical intraepithelial neoplasia:a critical review.
International Journal of Gynecological Pathology. Apr 1993; 12(2):186.より作成
図4 検診の流れ
メグル:

CIN3での、「治療」というのは…?

齊藤先生:

CIN3での治療は、より身体的に負担の少ない治療が可能になります。円錐(えんすい)切除術(せつじょじゅつ)といって子宮頸部の一部を切除して、子宮を残す方法です(図5)。つまり、適切なタイミングで治療を行った場合、子宮を残し、妊娠や出産が可能な状態で治療することもできます

図5 円錐切除術の範囲
ショーコ:

子宮頸がんの治療よりも負担が少ないということですね。

齊藤先生:

はい。そして例えがんになってからの発見でも、早期に発見して早期に治療すれば、子宮頸がんは90%以上が助かると言われています。2年に1回の検診を繰り返し受診して、異常があるときは精密検査を受けて通院していただければ、このように命が助かったり、子宮を残したりという可能性が生まれます。

※ここでいう「助かる」とは、診断時から5年生きている人の割合です。

子宮頸がんの原因は?HPVってなに?

アスナ:

せっかくなので、子宮頸がんのことをもっと知っておきたいです。子宮頸がんの原因って、確かウイルス…?でしたよね。

齊藤先生:

そうです。子宮頸がんは、ヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスの感染が原因で発生することがわかっています。HPVには100以上の種類があり、そのうちの十数種類が、子宮頸がんに深く関わっており、ハイリスクHPVともいいます。

ショーコ:

HPVには、どうやって感染するんでしょうか。

齊藤先生:

はい、HPVは、性交渉により感染するとされています。湯船や温泉、プール等でウイルスに触れたとしても感染しないので安心してください。

メグル:

性交渉で感染と聞くと、何だか怖くなってきます…。

齊藤先生:

そうですね。でもHPVはごくありふれたウイルスです。性交経験がある女性の8割近くが、一生のうち1度は、このウイルスに感染すると言われています。感染だけでは症状はなく、自分では気が付くことはないので、誰もが感染する可能性があると思ってくださいね。

アスナ:

なーんだ、誰でも感染するかも知れないんですね。珍しいウイルスじゃないんですね。

ショーコ:

でも…、子宮頸がんの原因なんですよね?

齊藤先生:

「HPV陽性=がん」というわけでも、HPVに感染すると必ずがんになるわけでもないんですよ。下のWHOの図のとおり、ほとんどの場合感染は一時的で、ウイルスは自然に消えるか活動しなくなると考えられています。まれに感染が長く続いて、その中の一部の方が前がん状態になり、さらにその一部が子宮頸がんになっていくと言われていて、それは初感染から数年から数十年かかると考えられています。つまり、HPVに感染したからといって、すぐにがんになるわけではないということです。

エイミ:

HPVを怖がりすぎてもしょうがないのか…。

HPV等の人口罹患率
出典:WHO.Fact sheet, Media centre.Update June2016
Human papillomavirus(HPV)and cervical cancerを基に翻訳して作成
http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs380/en/(外部サイト)

精密検査ではどんな検査をするの?

アスナ:

精密検査というのは、どんな検査なんでしょうか。

齊藤先生:

精密検査では、検診とは違う種類の検査、違う判断が必要になります。その目的はがんがあるのか、前がん状態ならばCIN1、CIN2、CIN3のどの段階なのかを知り、ご本人と医療施設とで情報を共有して、一番よい対応がとれるようにすることです。
そのため、検査の内容は、検診で行った細胞診の結果によって2種類に分かれます。アスナさんの検診結果通知書には、なんと書いてありましたか?

アスナ:

すみません…「要精密検査」という文字だけ目に入って、それ以外は覚えていません…(泣)

齊藤先生:

それではまず、検診結果の見方からご説明しますね。検診で行った細胞診の結果は、「ベセスダシステム」という方法で分類されます(図6)。

図6 細胞診の結果(ベセスダシステム)と精密検査細胞診の判定結果は「NILM=異常なし」「ASC-USという異常」「ASC-US以外の異常」の大きく3つに分類されます。
齊藤先生:

「NILM」というのは「異常なし」という意味ですね。NILMは「精密検査不要」ですので、2年後の検診を受けてください。

アスナ:

要精密検査には「ASC-US」と「ASC-US以外の異常」があるんですね。
「ASC-US以外の異常」の場合はどうなるんでしょうか?

齊藤先生:

「ASC-US以外の異常」の場合は、子宮頸部に酢酸をつけて白く変化するところに病気がある可能性があるので、それをコルポスコープ(腟拡大鏡)を使ってみながら、病気がありそうなところの組織を採取して標本を作り、顕微鏡で診断します(図7)。
組織の検査をしてはじめて、がんや前がん状態のCIN1、CIN2、CIN3かどうかがわかるんですよ。
コルポスコープ診、組織診ではどうしても少しは出血があるので、ナプキンを持参すると安心です。

アスナ:

ふむふむ…どの状態にあるかを詳しく調べるんですね。

図7 コルポスコープ診図解
ショーコ:

では、「ASC-US」というのはどういう意味ですか?

齊藤先生:

これは、細胞の形に変化がありますが、がんや前がん状態と関係した変化かどうかが判断ができない状態のことをいいます。形が変化している原因としては、子宮頸がんの原因となるハイリスクHPVに感染していることも考えられますし、がんと関係ないハイリスクではないHPVに感染している場合や、またはホルモンバランスの影響や炎症ということも考えられます。

アスナ:

がんや前がん状態と関係がない場合もあるという判定なんですね。

齊藤先生:

その通りです。そこで、「ASC-US」の場合は、まずはハイリスクのHPVに感染しているかどうかを調べるHPV検査を行います。そしてHPV検査が陽性であればASC-US以外の異常の場合と同じようにコルポスコープ診と組織診を受けます。HPV検査が陰性ならば病院で1年後に細胞診を受けてNILMになっていれば検診に戻ります。

ショーコ:

HPV検査って具体的にどんなことをするんでしょうか?

齊藤先生:

HPV検査は、検診と同じように子宮頸部から細胞を採取し、PCR検査によってハイリスクHPVに感染しているかどうかを調べる検査です。結果がでるのに1週間~2週間程度かかると思います。

エイミ:

精密検査はどこで受診すればいいんですか?

齊藤先生:

必ず精密検査を実施できる婦人科医療機関を受診することが大切です。
子宮頸がん検診を受けた検診施設では、精密検査は実施していないところも沢山あるので行く前に確認していくといいと思います。また、産婦人科でも精密検査を実施していないところがあるので、区市町村からの案内などを参考に確認して受診してくださいね。

アスナ:

なるほど…よくわかりました!

齊藤先生:

もし精密検査やその後の通院で、異常がなくなって「検診に戻っていい」と言われた場合は、そのあと必ず2年に1回の子宮頸がん検診を受診してください。一度治ってもまた前がん状態が出てくる場合もあるんですよ。

おわりに

アスナ:

子宮頸がんの精密検査のこと、ちゃんと知ったら、不安が少し和らいだかも。帰ったらまずは検診結果をちゃんと見てみる!

メグル:

私たちも、要精密検査になる可能性はみんなあるわけだから、教えてもらっておいてよかったわ。

エイミ:

アス姉~!精密検査、私もついてくから!!

アスナ:

一人で行けるってば(笑)。でも、ありがとね。。

ショーコ:

アスナがちゃんと検診を受けていたからこそ、精密検査が必要ってわかったんですものね。
せっかくだから、お医者さんには、しっかり検査してもらわなくちゃね!

お住まいの区市町村で実施している検診で「要精密検査」となった方へ 精密検査実施医療機関のリストを配布している場合があります。
詳しくは、お住まいの区市町村へご相談ください。
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