結果を受け取ったらどうすれば?
どんな検査をするの?
全部わかりやすくお伝えします。
(監修及び解説)
国際医療福祉大学三田病院 予防医学センター 講師
医学博士 齊藤 英子
しっかりもので
少し天然なお姉さん。
実家を出て彼氏と同棲中。
豪快な性格のキャリア女子。
一人暮らしで不摂生しがち...?
本を愛する書店員。
実家暮らし。
大人しめだが芯は強い。
天真爛漫な末っ子大学生。
実は一番空気が読める。
はあ…。
アス姉、ため息ついちゃって、どうしたの?
お姉ちゃんたちに話してみなさいよ。
あのね、これ…
子宮頸がん検診の結果?えーと、「要精密検査」…。
昨日通知が来てて…。びっくりしちゃって…。
そっか…。でもさ!女子けんこう部で知ったよね?「要精密検査」はイコールがんじゃないって。
うん。わかってるつもりなんだけど、いざ「要精密検査」って言われると…不安だよ~、ショーコ姉…。
私たちがついてるからね。でも、不安なままでいるのは辛いわよね…。
そうだ!こういうときこそ、ちゃんと知っておけば、こわくないよ!お医者さんに、みんなで聞きにいこう!ね?アス姉!
うん…!そうだね!
検査結果が「要精密検査」だったら?
ということで、子宮頸がんの専門医、齊藤英子先生にお話を伺いに来ました。先生、早速ですが、色々と教えてください。
先日受診した子宮頸がん検診で、「要精密検査」の結果を受け取って… どうすればいいのか、改めて知りたいです。
はい、まずお伝えしたいのは、「要精密検査のひとが全員がんというわけではない」、ということです。
ふわっとそのことは分かっているのですが…。具体的にはどういう状態なんでしょうか?
がん検診は「精密検査が必要な人(要精密検査)」と「精密検査の必要がなくて、2年後の検診を受ける人(精密検査不要)」に分けるまでが仕事です。子宮頸がん検診だけで、子宮頸がんと決まることはありません。
そして、子宮頸がんの特徴は「がん」だけでなく「前がん状態」があって、検診で見つかるものの中には「前がん状態」が多く含まれるんですよ。つまり、
「要精密検査」と判定された場合は、「がんの疑いがある」と「『前がん状態がある』可能性がある」という状態です。
前がん状態はCIN(シーアイエヌ)と呼ばれ、精密検査では、がん以外にCINが数多く診断されています。
都内の20~30歳代の女性で精密検査を受ける人が100人いるとき、そのうち子宮頸がんであるのは1人(1%)程度であると報告されています。ですから色々心配し過ぎる前に、まず精密検査を受診することが重要です。(図1)
※人数は平成30年度に都内の子宮頸がん検診で要精密検査となった20歳代~30歳代の人を100人とした場合の割合です。
出典:令和元年地域保健・健康増進事業報告
100人に1人…!少しだけホッとする数字かも…。
この、「CIN」と診断される場合もあるんですよね。そう診断されたらどうなるんでしょうか?
CINとは、下の図のとおり、がんになる前の前がん状態で、CIN1(軽度異形成)、CIN2(中等度異形成)、CIN3(高度異形成・上皮内がん)の3段階に分けて診断しています。(図2)
何も病気がない方が急に子宮頸がんになるとは考えにくく、CIN1→CIN2→CIN3→子宮頸がんと順を追ってゆっくり時間をかけて進んでいくと考えられています。
前がん状態である
CINが、がんと大きく違う点は、全例ががんになるわけではなく、そのままの状態に留まり続けたり、自然に治ってしまう場合がある点です。
例えば、CIN1では10%程度が、CIN2では20%程度がCIN3に進行し、さらに、CIN1では1%程度が、CIN2では5%程度ががんに進行するといわれています(図3)。
必ずしもがんに進行するわけではないんですね。
そうなんですよ。そしてCIN1やCIN2の場合は、病気が進んでいないかどうか確認するために、精密検査ができる施設で精密検査を繰り返す経過観察(通院)が必要です。
精密検査で経過観察の通院を続けて異状がなくなり、医師から「検診に戻ってよい」と許可がでれば、また2年に1回の検診を受けていただきます(図4)。
一方、CIN3になった方では、長い期間では30%程度ががんに進行する可能性があるといわれているため、基本的には治療をすることになっています。
International Journal of Gynecological Pathology. Apr 1993; 12(2):186.より作成
CIN3での、「治療」というのは…?
CIN3での治療は、より身体的に負担の少ない治療が可能になります。円錐(えんすい)切除術(せつじょじゅつ)といって子宮頸部の一部を切除して、子宮を残す方法です(図5)。つまり、適切なタイミングで治療を行った場合、子宮を残し、妊娠や出産が可能な状態で治療することもできます。
子宮頸がんの治療よりも負担が少ないということですね。
はい。そして例えがんになってからの発見でも、早期に発見して早期に治療すれば、子宮頸がんは90%以上が助かる※と言われています。2年に1回の検診を繰り返し受診して、異常があるときは精密検査を受けて通院していただければ、このように命が助かったり、子宮を残したりという可能性が生まれます。
子宮頸がんの原因は?HPVってなに?
せっかくなので、子宮頸がんのことをもっと知っておきたいです。子宮頸がんの原因って、確かウイルス…?でしたよね。
そうです。子宮頸がんは、ヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスの感染が原因で発生することがわかっています。HPVには100以上の種類があり、そのうちの十数種類が、子宮頸がんに深く関わっており、ハイリスクHPVともいいます。
HPVには、どうやって感染するんでしょうか。
はい、HPVは、性交渉により感染するとされています。湯船や温泉、プール等でウイルスに触れたとしても感染しないので安心してください。
性交渉で感染と聞くと、何だか怖くなってきます…。
そうですね。でもHPVはごくありふれたウイルスです。性交経験がある女性の8割近くが、一生のうち1度は、このウイルスに感染すると言われています。感染だけでは症状はなく、自分では気が付くことはないので、誰もが感染する可能性があると思ってくださいね。
なーんだ、誰でも感染するかも知れないんですね。珍しいウイルスじゃないんですね。
でも…、子宮頸がんの原因なんですよね?
「HPV陽性=がん」というわけでも、HPVに感染すると必ずがんになるわけでもないんですよ。下のWHOの図のとおり、ほとんどの場合感染は一時的で、ウイルスは自然に消えるか活動しなくなると考えられています。まれに感染が長く続いて、その中の一部の方が前がん状態になり、さらにその一部が子宮頸がんになっていくと言われていて、それは初感染から数年から数十年かかると考えられています。つまり、HPVに感染したからといって、すぐにがんになるわけではないということです。
HPVを怖がりすぎてもしょうがないのか…。
Human papillomavirus(HPV)and cervical cancerを基に翻訳して作成
http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs380/en/(外部サイト)
精密検査ではどんな検査をするの?
精密検査というのは、どんな検査なんでしょうか。
精密検査では、検診とは違う種類の検査、違う判断が必要になります。その目的はがんがあるのか、前がん状態ならばCIN1、CIN2、CIN3のどの段階なのかを知り、ご本人と医療施設とで情報を共有して、一番よい対応がとれるようにすることです。
そのため、検査の内容は、検診で行った細胞診の結果によって2種類に分かれます。アスナさんの検診結果通知書には、なんと書いてありましたか?
すみません…「要精密検査」という文字だけ目に入って、それ以外は覚えていません…(泣)
それではまず、検診結果の見方からご説明しますね。検診で行った細胞診の結果は、「ベセスダシステム」という方法で分類されます(図6)。
「NILM」というのは「異常なし」という意味ですね。NILMは「精密検査不要」ですので、2年後の検診を受けてください。
要精密検査には「ASC-US」と「ASC-US以外の異常」があるんですね。
「ASC-US以外の異常」の場合はどうなるんでしょうか?
「ASC-US以外の異常」の場合は、子宮頸部に酢酸をつけて白く変化するところに病気がある可能性があるので、それをコルポスコープ(腟拡大鏡)を使ってみながら、病気がありそうなところの組織を採取して標本を作り、顕微鏡で診断します(図7)。
組織の検査をしてはじめて、がんや前がん状態のCIN1、CIN2、CIN3かどうかがわかるんですよ。
コルポスコープ診、組織診ではどうしても少しは出血があるので、ナプキンを持参すると安心です。
ふむふむ…どの状態にあるかを詳しく調べるんですね。
では、「ASC-US」というのはどういう意味ですか?
これは、細胞の形に変化がありますが、がんや前がん状態と関係した変化かどうかが判断ができない状態のことをいいます。形が変化している原因としては、子宮頸がんの原因となるハイリスクHPVに感染していることも考えられますし、がんと関係ないハイリスクではないHPVに感染している場合や、またはホルモンバランスの影響や炎症ということも考えられます。
がんや前がん状態と関係がない場合もあるという判定なんですね。
その通りです。そこで、「ASC-US」の場合は、まずはハイリスクのHPVに感染しているかどうかを調べるHPV検査を行います。そしてHPV検査が陽性であればASC-US以外の異常の場合と同じようにコルポスコープ診と組織診を受けます。HPV検査が陰性ならば病院で1年後に細胞診を受けてNILMになっていれば検診に戻ります。
HPV検査って具体的にどんなことをするんでしょうか?
HPV検査は、検診と同じように子宮頸部から細胞を採取し、PCR検査によってハイリスクHPVに感染しているかどうかを調べる検査です。結果がでるのに1週間~2週間程度かかると思います。
精密検査はどこで受診すればいいんですか?
必ず精密検査を実施できる婦人科医療機関を受診することが大切です。
子宮頸がん検診を受けた検診施設では、精密検査は実施していないところも沢山あるので行く前に確認していくといいと思います。また、産婦人科でも精密検査を実施していないところがあるので、区市町村からの案内などを参考に確認して受診してくださいね。
なるほど…よくわかりました!
もし精密検査やその後の通院で、異常がなくなって「検診に戻っていい」と言われた場合は、そのあと必ず2年に1回の子宮頸がん検診を受診してください。一度治ってもまた前がん状態が出てくる場合もあるんですよ。
おわりに
子宮頸がんの精密検査のこと、ちゃんと知ったら、不安が少し和らいだかも。帰ったらまずは検診結果をちゃんと見てみる!
私たちも、要精密検査になる可能性はみんなあるわけだから、教えてもらっておいてよかったわ。
アス姉~!精密検査、私もついてくから!!
一人で行けるってば(笑)。でも、ありがとね。。
アスナがちゃんと検診を受けていたからこそ、精密検査が必要ってわかったんですものね。
せっかくだから、お医者さんには、しっかり検査してもらわなくちゃね!