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がん患者および家族一般都民向けの正しいアピアランスケアの情報

【執筆】藤間 勝子(国立がん研究センター中央病院アピアランス支援センター)

目次

<はじめに 「アピアランスケアとは何ですか?」>

〇アピアランスケアとは「がんやがん治療によって外見が変化しても、その人らしく社会生活を送れるよう、患者さんを支えるケア」のことです。

治療によって外見が変わってしまうと「今まで通りの生活ができない」とか「家に引きこもっていなければいけない」と思う方が多いのですが、実際には外見が変わっても、仕事や学校に通いながら普段通りの生活を続けることができます。ほんの少しだけ、外見変化の対処の方法やコツを知ると、気持ちが楽になり安心して生活することができます。アピアランスケアを行う目的は「美しくなること」ではありません。まずは「外見が変化しても、患者さんが自分にあった方法で対処ができ、安心して今まで通りの生活を送ること」を目指します。

〇新しい身体像を受け入れ難くとも、それに折り合いをつけ、日常生活を支障なく送ることができるよう支援します。

人によっては変わってしまった外見を受け入れにくいこともあるかもしれません。例えば手術によって顔や体の一部を失うことは、なかなか受け入れ難いものです。そのような時に無理に受け入れなくても、それに折り合いをつけて、今までに近い生活を送れることを目指します。

がんやがん治療で外見が変わると、自分らしさが失われ、人生をがんに支配されているように感じることもあります。外見のケアを通じて、がんに振り回されるのではなく、自分の人生を自分自身の手に取り戻してもらうことは、生活の質や治療への意欲をあげることに繋がります。

逆に、どれほど美しく外見を整えても、患者さん自身が、がんや他者との接触におびえて、自分らしい人生を送れないのでは意味がありません。また、外見が変化しても、自分自身が気にならず、今まで通り普通に社会生活を送れるのであれば、改めてアピアランスケアを行う必要もありません。アピアランスケアとは、自分らしい外見を得ることにより、他の人や社会とのつながりをサポートするものなのです。

1.外見変化による気持ちのつらさ

今まで医療者は命を救う治療を優先し、外見の変化についてはあまり重視しない傾向がありました。しかし、患者さんにとって外見の変化は大きな苦痛であることが明らかになってきています。ところで、なぜ脱毛や肌の変化が、吐き気などの肉体的な苦痛より上位になるのでしょうか?

 見た目が変わってしまって「自分らしくない」と思うだけでなく、見た目の変化から周囲の人にがんであることがわかってしまい、今までと同じように人付き合いできないのではないか、と心配し、つらくなる人が多いのです。

脱毛や皮膚の変化、手術による傷など外見の変化は、自分だけでなく人からも容易に見えてしまいます。そのような外見の変化から必ずしも「がん」だと知られるわけではないのですが、当事者としては「病気で弱い人と思われる」「命が短いなどと思われたり、噂になるのではないか」と心配になってしまうのです。病気だと知られることで、仕事を外されたり、昇進昇格等に影響するのではないか、と心配される方もいます。今までは、対等の関係であったのに、急に同情されたり、頼りにされなくなったりすることはとても悲しいことです。病気を抱えながら他の人や社会とのつながりを持って生活するときに、外見の変化を苦痛に思うことは当然のことなのです。

2.アピアランスケアの基本

〇自分に現れる外見の変化について、正しい情報を得るように心がけましょう。

治療によって外見に現れる変化は違います。慌てて、不要なものを準備しないよう、ご自分に起こる変化について正しい知識を得るようにして下さい。

がんの治療には手術療法・薬物(化学)療法・放射線療法があり、それぞれの治療方法によって外見に現れる症状は違います(表1)。よく誤解されていることですが、抗がん剤で治療したからといって必ず脱毛するわけではありません。脱毛の程度も、薄毛程度の場合から、ほとんどの頭髪を失うようなこともあります。また、放射線治療では、放射線が当たる部分だけに脱毛が生じますので、乳房や消化器、手足などに照射しても頭髪の脱毛は起こりません。

治療が決まったら、まず主治医・看護師・薬剤師等病院のスタッフに「自分が受ける治療ではどのような外見の変化が起こるのか」を確認しましょう。最近は、インターネットで症状を検索する人が多いのですが、不正確な情報や古い情報が混ざっていることも頻繁にありますので注意が必要です。また、同じ薬剤でも使う頻度や量によって症状は変わりますので、自分にはどのような変化が起こるのかを正しく知っておくことが大切です。

〇「がん患者用」「医療用」などと称した特別な製品を選ぶ必要はありません。

がん患者用や医療用と称したウイッグや化粧品、ネイルケアなどが販売されていますが、医学的に効果が検証されたものはありません。医療者から特別な指示がない限り、ごく普通に販売されている製品を使用して特に問題ありません。

〇外見が変化しても、必ず隠さなければいけないわけではありません。

脱毛したからと言って必ずウイッグをかぶらなければならない、そのようなことはありません。ご自分が心地よく過ごせる、生活にあった方法を選んでください。

表1
  消化管がん 乳がん 肝胆膵がん 血液がん 肺がん 婦人科がん
男性
(n=134)
女性
(n=68)
女性
(n=174)
男性
(n=36)
女性
(n=33)
男性
(n=28)
女性
(n=32)
男性
(n=29)
女性
(n=26)
女性
(n=28)
順位 症状 症状 症状 症状 症状 症状 症状 症状 症状 症状
1 ストーマ ストーマ 脱毛 足のむくみ 下痢 吐き気・嘔吐 脱毛 全身の痛み 脱毛 体に管がついた
2 吐き気・嘔吐 指のしびれ 手術による
乳房切除
便秘 手術による
体の表面の傷
足の変色 吐き気・嘔吐 吐き気・嘔吐 全身の痛み 脱毛
3 下痢 発熱 吐き気・嘔吐 顔のむくみ 指のしびれ 口内炎 腕の変色 声がうまく
出ない
便秘 吐き気・嘔吐
4 口内炎 下痢 指のしびれ 皮膚のかゆみ 体全体の変色 発熱 嗅覚の変化 口内炎 指のしびれ 眉毛の脱毛
5 指のしびれ 吐き気・嘔吐 全身の痛み 吐き気・嘔吐 しみ・くま だるさ 味覚の変化 指のしびれ 吐き気・嘔吐 足のむくみ
6 便秘 顔全体の変色 眉毛の脱毛 体に管がついた 腕の注射のあと 頭痛 だるさ 嗅覚の変化 味覚の変化 指のしびれ
7 治療部分の
痛み
足のむくみ まつ毛の脱毛 下痢 全身の痛み 顔のむくみ 指のしびれ 発熱 手の爪の割れ 便秘
8 食欲の変化 便秘 手術による
体の表面の傷
指のしびれ 食欲の変化 傷が出来やすい 全身の痛み 息切れ だるさ 味覚の変化
9 味覚の変化 口内炎 手の爪の割れ 発熱 だるさ 足のむくみ 頭痛 頭痛 嗅覚の変化 だるさ
10 皮膚の湿疹 脱毛 手の爪の二枚爪 頭痛 皮膚のかゆみ 不眠 眉毛の脱毛 だるさ 発熱 味覚の変化

3.ご家族の方へ

〇大切なのは「外見が変わってもあなたが大切な人であることに変わりない」と言葉で伝えること。

患者さんが治療により外見が変化するのを見るのは家族にとってもつらいことです。大事な人であるからこそ、どうにかしてあげたいと思い、先回りして「ウイッグを買いに行きましょう」「お化粧すればいいんだって」「●●という製品を使うといいよ」などとアドバイスしたり、実際に物品を準備したくなるかもしれません。

でも、先回りして準備をすることで、本人に、「自分の外見が変わってしまったのを家族はおかしいと思っている」「こんな外見の自分を嫌だと思っている。だから色々勧めるのに違いない」という気持ちにさせてしまうこともあります。まずは「治療により外見が変わっても、家族はあなたのことを変らず大切に思っていること」「外見が変わった姿でも、自分にとって大切な人であることは変わらないこと」を言葉で伝えることが大切です。患者さんは外見の変化で自信を失っています。当たり前、と思うことでも言葉で伝えることが必要です。その上で、「気になっていることや手伝えることがあるなら言って」と声をかけ、一緒によい方法を考えてみてください。

4.小児やAYA世代の患者さんのご両親、ご家族の方へ

※AYA世代とはAdolescent&Young Adult(思春期・若年成人)のことをいい、15歳から39歳の患者さんがあてはまります

〇ご両親やご家族の不安を医療者に相談してください。

〇保育園や幼稚園、学校とも相談しながら、良い方法を考えていきましょう。

お子さんが病気であるだけでも心配でいっぱいのところに、脱毛などの外見の変化があると説明されると、さぞかし不安だと思います。なんでも先に準備してあげたいと思うのは当然のことです。しかし、お子さんによっては、親御さんがウイッグをかぶりなさいと伝えることで、「自分は変なかっこうになるんだ」「恥ずかしい存在なんだ」と逆に思ってしまうこともあります。

まずは、治療で姿が変わっても、ご両親やご家族にとっては変わらず大切な存在であることを伝えてください。また、慌てて、ウイッグや帽子を準備しようとして、不要に高額な製品を買ってしまうこともあります。子供の場合でも大人同様に、医療用や患者用の製品を選ばなくても構いません。本人の好きなデザインや付け心地のよい製品を選んでください。小児科では無料で提供されるウイッグの情報を持っていることが多いので、まずはかかりつけの病院でどのように準備したらよいのかを相談するようにしてください。

学校や幼稚園・保育園に復学する時は、先生方と病気や外見の変化について、周りに説明するのかしないのか、するならば、どこまでどのように説明するのかを打ち合わせておくとよいです。

七五三などのライフイベント、卒入園・卒入学など、お子さんやご家族にとって大切な行事もあきらめないで、まずは行うための何か良い方法はないかをかかりつけの病院で相談してみてください。

<アピアランスケアの方法>

ほとんどの場合、特別な製品を使ってケアする必要はなく、日常の生活通りか、あるいは少しだけ方法を変えるだけで、上手くいくことが多いものです。

外見に変化が出てきた時は、自己流で対応する前に、まずは主治医か受診している病院の看護師に相談してみてください。薬が処方されることもあります。気をつけなければならないのは、インターネット上の情報です。様々なアピアランスケアの方法が流れており参考にする人が多いのですが、必ずしも正しい情報とは限りません。がんの種類や治療方法、治療の経過により同じように見える状態でも対応が違う時もあり、ある人には良かったけれど、他の人には適さないという場合もあります。

1.脱毛について

【1】抗がん剤による頭髪の脱毛への対処
がん治療と言えば「脱毛」の印象を強く持っている人が多いのですが、脱毛しない抗がん剤もたくさんあります。また、脱毛する場合も、薄毛になる程度もあれば全脱毛まで状態は様々です。慌てず、主治医に確認してください。実際の脱毛は、脱毛する抗がん剤を初めて使ってから2~3週間後より始まることが多いです。ウイッグや帽子、スカーフなどを使って脱毛をカバーする人もいれば、そのままの姿で過ごす人もいます。

(1) 脱毛が始まる前・始まってからのケア
〇 事前に髪を切っておいても、切らなくても、どちらでもよいです。
〇 特別なシャンプーや洗髪方法などに変える必要もありません。
脱毛がおきる抗がん剤を初めて使った日から2~3週間すると脱毛が始まることが多いです。脱毛は頭全体で一斉におこり、数日で髪全体のボリュームが減り、頭頂部の地肌が目立ってきます。薬の種類によってウイッグや帽子が必要となるほど脱毛する場合と、薄毛程度でとどまることがあります。ご自分の脱毛がどの程度なのかは医療者に聞いておくと安心です。脱毛時には抜け毛が散らばるのが気になる人が多いので、頭にネットをかぶっておくとよいです。専用品も販売されていますが、台所で使う排水溝用のストッキングネット(深型)で代用できます。

髪の長い方は、事前に髪をカットしておくと、散らばる毛の長さが短くなり掃除しやすくなりますし、また洗髪時に抜けた毛と抜けない毛が絡まりにくく、扱いやすくなります。しかし、病気のせいで自分の思うような髪型ができないのはつらい、腹立たしいという方もいます。切りたくないときは、洗髪時に髪が絡まないよう、地肌をすくように洗うとよいでしょう。

また、シャンプー剤などを低刺激・敏感肌用・赤ちゃん用・オーガニックなど今までと違う製品に変える必要はありません。がん患者の脱毛用と称したシャンプーが販売されていますが、使用により脱毛しない、あるいは、早く再発毛するなどのエビデンスは確認されていません。香りや感触が好みであれば使えばよいでしょう。完全に脱毛してしまったら、シャンプーで洗わなくてもよく、洗顔料やボディソープ、石鹸など、顔や身体を洗う延長で地肌を洗う人が多いです。リンスやコンディショナーは髪に使うものであり、脱毛してしまったら使用する必要はありません。

脱毛している最中は、頭皮がぴりぴりしたり、チリチリとした違和感や痛みを感じることがあります。ただし、薬が必要となるほど痛む方はほとんどいません。脱毛がある程度進行し脱毛が減ると落ち着くことが多いです。

(2) 脱毛が始まる前に準備しておくとよいもの
〇自分のファッションにあった外出する時の帽子
帽子の販売店では試着室がないことが多く、脱毛してからは行きにくいことがあります。外出用の帽子を事前に準備しておくと、ウイッグを使わないときでも気軽に外出できます。ベレー帽やキャスケットのようにつばがない/小さい帽子であれば、室内でも脱がずに済み便利です。帽子の下にかぶる専用のウイッグも販売されていますが、部分だけであれば、手軽なつけ前髪が使いやすいです。帽子から少し前髪が見えるだけでも印象が違います。ウイッグの上から帽子をかぶってもよいかと質問されることがありますが、暑くなりやすいこと、またつばの大きな帽子では風を受けやすく、逆に飛ばされやすくなるのでお勧めしていません。

〇家の中で使う帽子
家の中で脱毛した状態のままで過ごすのは心もとないという方もいます。医療用などと称した帽子も販売されていますが、患者さんが使わなければいけない医学的な根拠はありません。こちらも自分の好みやファッションに合わせて選ぶとよいでしょう。市販の患者さん用帽子では、病人っぽいデザインが気になる、気持ちが病人になるという人もいます。そんな時は手持ちのもので工夫してみるとよいでしょう。頭部がカバーできればどのようなものでもよく、スカーフや手ぬぐい、タオルなどを頭に巻いて過ごす人もいます。また、ネックガードやネックカバーなどの伸縮性のある布でできたチューブ状の製品も使いやすいです。タオルや子供向けのTシャツなどから手作りすることもできます。

(3) ウイッグの準備
最近ではオーダーでウイッグを準備する人は殆どいないので、店舗に在庫があればその日のうちに入手できますし、通販などでも数日で手元に届きますから、焦って購入する必要はありません。必ず「医療用」の製品を選ぶ必要はなく、自分が気に入るのであればファッション用でも構いません。「医療用」ウイッグを使わないと再発毛は保証しないなどとの文言で、患者さんにウイッグを販売している業者もありましたが、全く根拠はありません。購入先は、ウイッグ専門店の他、百貨店や理美容室、ファッション小物の取扱店、バラエティショップなどの他、最近では通販も人気です。あまり使用しない予定であれば、必要な時だけレンタルするという方法もあります。

〇ウイッグを選ぶ時に一番大切なこと
ウイッグを選ぶ時に一番大切なことは、「自分に似合う」デザインかどうかです。今の自分の髪型と同じものを選ぶ必要もありません。今の髪型以上に自分が素敵に見えるウイッグであれば、それでも良いのです。洋服を買う時に、素材や縫製から製品を選ぶよりは、まずは見た目のデザインから選ぶことが多いのではないでしょうか?ウイッグも同じように、自分が身につけて素敵だと思えるものを選んでください。

〇自分の予算にあった価格で!
ウイッグの価格は数千円から数十万円まで様々です。価格が高いウイッグであれば、「自然」で「他人から見て分からない」と思い、多少無理をしても高いウイッグを買わなければと思い込んでいる人がいますが、そんなことはありません。患者さんの中には数千円のウイッグでも、自分らしく着こなし、自然に仕上げている人もいます。価格は自分の予算次第で、いくらの製品を選べばいいという指標はありませんが、乳がんの女性を対象としたアンケートでは、65%の人が10万円以下のウイッグを購入しているというデータがあります。私達が患者さんとお会いしている中では3~5万円程度を希望される方が多く、なお手ごろであればさらによい、という人が多い印象です。数千円のウイッグを購入し、数か月ごとに新しい製品に買い替えていく人もいます。

〇かぶり心地は工夫次第
ウイッグの内側の作りは、患者さんができるだけ快適に過ごせるよう、各社で工夫を凝らしている部分です。しかし、かぶり心地については、感じ方に個人差があり、一概にどのような製品が良いかは言えません。いろいろと試着をして、自分が心地よいと思う製品を選ぶと良いでしょう。もし、デザインは好みだが内側の肌触りが気になると言う場合には、薄いガーゼや手ぬぐいなどをウイッグの下に挟んでかぶると良いでしょう。 なお、脱毛後頭皮に湿疹が出ることがあり、粗悪なウイッグをかぶったから頭がかぶれたと思い込んでいる人もいますが、治療している薬の影響でおこることもあります。もし湿疹が出た時は、主治医または皮膚科医に相談するようにしてください。

〇ネットでウイッグを探すときは
最近は病院でパンフレットを配布する会社も少なくなったこともあり、インターネットでまずは情報検索する方が増えています。ネットで検索する場合は、「ウイッグ・性別・年代・デザイン(ショート、ロング、白髪交じり、ウエーブなど)」の検索用語を入れて探すとよいです。「医療用」「がん患者用」「化学療法」「脱毛」などの用語を入れて探すと、高額な製品がヒットしやすい傾向にあります。 また、検索エンジンを使うときは「画像検索」を使うと、写真が出てくるので好みの製品を探しやすいです。

〇一度に2個買う必要はない
「毎日かぶるなら」「洗い替え用に」などと一度に複数個の購入を勧められることがありますが、本当に必要になってから準備するので充分です。

〇メンテナンスは本当に必要か考えて
購入時に、ウイッグのシャンプーやサイズ調整、カットなどのメンテナンスサービスを勧められることがありますが、本当に必要かよく考えてから選択してください。仕事や家事などの日常の生活に、治療による通院や体調が加わった上に、さらにウイッグのメンテナンスで定期的に出かけるのは負担が大きく、結局は利用しなかったという方もいます。

〇購入したら、自分に似合うようカットしてもらう
ウイッグを購入したら、顔周りや襟足などを自分に似合うようカットすると、より自分らしくなります。購入店でカットして貰えることもありますが、通信販売などで購入した場合は、今まで自分が通っていた理美容室に相談してみるとよいです。もし行ってもらえない場合は、病院内にある理美容室などに相談するとよいでしょう。

〇男性の場合
男性では、ウイッグを準備しない方も多くいます。これは一般に男性の場合、女性に比較し、頭髪の脱毛が社会的に容認される傾向があること、また、ウイッグを準備しても女性に比較すると使用する期間が短いこと(抗がん剤終了後数か月で、いがぐり頭程度には発毛することが多い)、短期間に自毛、ウイッグ、再発毛と、髪型が変わること自体不自然であると好まない方が多いことが理由として挙げられます。しかし、自分の外見が気になる場合や、仕事上病気であることを外部に伏せなければならない場合には我慢する必要はありません。 男性用のウイッグは女性用よりも価格が高い傾向にありますが、最近では手ごろな製品がネット販売されるようにもなってきました。男性用ウイッグをネットで探す場合には、女性用や頭頂部だけをカバーする部分ウイッグがでてこないよう、「男性」「フルウイッグ」との用語を入れて検索します。 また、ウイッグを使用しない場合は、薄くなった眉毛を化粧で補うと顔の印象がはっきりします。

(4) 再発毛促進を目的とした育毛剤やヘアケアについて 
脱毛の予防や再発毛の促進を期待して育毛剤を使用した方がよいかとの質問があります。脱毛予防効果を検証された外用薬はありません。再発毛促進に関しては、質の高いエビデンスではないものの2%ミノキシジル外用で再発毛が促進されたという研究がある以外は、現在のところ、がん患者の脱毛に対する育毛剤の効果は確認されていません。育毛剤を使うこと自体否定しませんが、過度に効果を期待しないことをお勧めます。  
またシャンプー剤などのヘアケア商品でも、再発毛促進や育毛効果を期待させるような文言で紹介されているものもありますが、根拠に乏しく効果は期待できません。もし使用するのであれば、過度に期待せず楽しみの範囲で用いてください。ヘッドマッサージやヘッドスパと称したヘアケアについても、再発毛促進の有効性について質の高いエビデンスはありません。こちらもリラクゼーションや心地よさを楽しむ感覚で行うことをお勧めします。

(5) 再発毛後の毛染めついて

再発毛後、どのくらいたったら毛染めやパーマを掛けてよいかとの質問もよく寄せられます。

毛染めについては、

  1. 過去に染毛剤によるアレルギーや皮膚症状がないこと

  2. 頭皮に湿疹などがないこと

  3. 染毛剤の使用に適した長さまで毛髪が伸びていること

  4. 地肌に薬剤がつかないように染毛すること

  5. パッチテストを実施するよう記載されている製品については、パッチテストを行い、その結果が陰性であること

以上の条件を満たした上で、注意深く行うのであれば、治療前に使っていた毛染め剤やカラーリンス、カラートリートメント、ヘアマニキュアを使うことは否定しません。しかし、問題が生じないという保証はありません。もし、皮膚に問題が生じた場合は直ちに皮膚科を受診するようにしてください。
また、自分で染めると地肌に染毛剤がつきやすいので、理美容師に施術して貰うようにしましょう。
髪の伸び具合は人によって異なります。およそ4~5センチ伸びてきたら、そろそろ毛染めができるかどうか理美容師に相談してみるとよいでしょう。

(6) 再発毛後の縮毛矯正(ストレートパーマ)について

再発毛し始めた頭髪は、天然パーマのように自然にウエーブの付いた毛が生えてくることが多く、まっすぐにするため縮毛矯正を行いたいと希望する患者さんもいます。

この場合は、充分に毛髪が伸びた後に、理美容師に施術して貰うことは否定しません。但し、ウエーブのある状態をストレートにすることでボリュームが減り、思ったような仕上がりにならないという方もいます。担当する理美容師と仕上がりについてよく確認してから、行うようにしてください。

【2】抗がん剤治療以外の脱毛

〇放射線治療

頭頚部の放射線治療では、照射された部分に脱毛が生じることがあります。照射する線量や部分によって脱毛の範囲や程度が異なりますので、治療の前に医療者に確認しておきましょう。

また、放射線治療用のマスクの型どりをしてしまうと、サイズが変わらないよう髪を切らないよう指示されることがあります。放射線治療は1~2カ月かかることもあるので、気になる場合はマスクの型どり前に髪型を整えておくとよいです。

 

〇手術による脱毛や剃毛

頭部の手術では、皮膚を取り除いたりするとその部分に頭髪が戻ってこないことがあります。また、皮膚を切った傷が残ることもあります。多くの場合他の部分の髪を伸ばしてカバーすることができます。カバーしにくい時には、髪の生えない部分の皮膚が目立たないよう頭皮用の黒いファンデーションを塗布したり、部分で使えるウイッグや付け毛でカバーすることなどの方法があります。

【3】眉毛の脱毛

 眉毛は髪の毛より後に抜けて、先に生えてくることが多く、一気に抜けるというよりは徐々に本数が減り薄くなっていきます。眉毛の脱毛は化粧で眉を補います。アイブローパウダーと呼ばれる粉状の眉墨を使うと描きやすく、頭髪の脱毛が始まったころから、少しずつ眉を描く練習を始めると慌てずに済みます。

最初は生えている眉の上をなぞるようにして描く練習をするとよいです。左右対称にきれいに描こうとすると緊張しますので、薄くなった眉の色を濃くするくらいのつもりで、描きます。心配な人は脱毛する前の顔を携帯電話などで撮影しておき、いつでも確認できるようにしておくと安心です。

描く時は、目の上に目幅程度の長さの横線を描くつもりでかきます。眉の太さや長さは流行があるので、好みで決めてもらってよいです。どうしても描き方がわからない、教えてほしい、という方は、脱毛する前に化粧品売り場の販売員さんに相談し、必要な製品と描き方を教えてもらうのも方法です。最近では男性の販売員もいるので、男の方でも相談しやすくなっています。

〇アートメイクについて

皮膚の薄い位置に針で色素を入れて眉やアイラインを描く「アートメイク(メディカルタトゥー)」という技法があります。洗顔しても落ちないので毎日描く手間がかからないのがよい点ですが、針を皮膚に刺す施術なので、治療で免疫が下がっている時期に行うことは勧めません。また時間が経つと消えるといわれているものの、実際には残存することもあり、その場合は除去が難しいという問題があります。

基本的には化学療法中やその予定があるときには避けることを原則としていますが、例外的に、転移・再発治療等で脱毛する化学療法を長期に渡って行い、眉の脱毛が継続している患者さんが希望される場合には、リスクを十分に理解していただいたうえで、免疫力の程度を総合的に判断して行うかどうかを検討することとしています。

【4】まつ毛の脱毛

まつ毛も髪の脱毛の後に始まり、先に生えてくることが多いです。まつ毛の脱毛にはつけまつげを使わなければならないと思っている人が多いのですが、最近は流行も変わったためつけまつげを使っている人はあまりいません。

まつ毛が抜けて目元の印象がはっきりしなくて困った時は、目の際にアイシャドウやアイラインをつけることで改善します。また、まつ毛が抜けて、眩しかったりゴミが入りやすい時は、メガネを利用するとよいでしょう。フレームにデザインがあったり、色がついている、アクセサリー感覚のメガネを使うと、眉毛やまつ毛に注目がいかなくなります。

もしつけまつげをつける場合は、つけまつげの軸が皮膚に擦れたり、外すときにまぶたを引っ張るなどの刺激がないよう、使い方に注意します。つけまつげののりについては、ラテックスタイプとアクリルタイプがあります。ラテックスにアレルギーのある人はアクリルタイプを選ぶとよいでしょう。

 

〇まつ毛エクステンション(まつエク)について

自分のまつ毛の根元に接着剤をつけて人工のまつ毛を接着する技法です。脱毛する治療の場合、まつ毛エクステンションをつけても、自分のまつ毛ごと抜けてしまうのでお勧めできません。再発毛後に行う時も、十分まつ毛が成長してから行うようにしてください。

 

〇まつ毛の再発毛を促す化粧品について

まつ毛が早く伸びる、ボリュームが増えるなどと広告している化粧品もありますが、がん患者で効果を検証した製品はほとんどありません。他の化粧品同様、効果を期待しすぎず、楽しみの範疇で試すようにしてください。
美容皮膚科等で処方されるまつ毛貧毛症治療薬「ビマトプロスト」については、がん患者に対する二重盲検ランダム化比較試験で改善傾向が優位に高かったとの報告があります。ただしこの薬に関しては自由診療となるのでご注意ください。

2.スキンケア

がん治療中のスキンケアは「清潔」「保湿」「保護」の3点が基本になります。汚れたら洗うこと、肌が乾燥しやすくなるので保湿をすること、肌を強く擦ったり、紫外線に無防備に当たらないよう肌を保護することが必要になります。特別に使わなければいけない石鹸や洗顔料、化粧品などはありません。ほとんどの人はそれまで使っていた製品を継続使用しており、問題ありません。ピリピリする、かゆみがでるなど違和感があった場合は、使用を中止し、皮膚科専門医を受診してください。

【1】清潔にする

洗顔、洗髪、入浴については、特別に指示されない限り、治療前と同じようにおこなってかまいません。また、特別に使うべき製品はありません。皮膚を擦ることは避けた方がよいため、あかすりなどに使う硬いナイロンタオルは使用しないようにします。逆に擦りすぎるのを怖がって、肌をなでるように洗う人がいます。ほとんどの場合それで問題ないのですが、肌に軟膏などの外用薬がついていると落ちにくいことがあります。肌に汚れが残らないよう、適切な力で丁寧に洗うようにしてください。

 すすぎや入浴の際のお湯の温度が熱すぎると脱脂しすぎて肌を乾燥させることがありますので注意しましょう。 洗顔や入浴後、水分をふき取る場合も、肌を擦りすぎないよう、柔らかいタオルを軽く押し当てるようにし水気をふき取るとよいでしょう。

【2】保湿する

乾燥をさけるため、肌には化粧品や保湿剤をつけるとよいでしょう。ニキビ用やひげそり後用の化粧水などアルコールが多く含まれた製品は、肌を乾燥させるのでお勧めできません。入浴の際には、充分なエビデンスはないものの、保湿タイプの入浴剤を使うことをお勧めします。 

【3】保護する

前述の通り、肌を擦りすぎないよう注意するとともに、無防備に紫外線を浴びないようにすることも大切です。日中(8時~16時くらいまで)に出かける場合は、帽子や日傘、長袖など、衣類で保護するか、日焼け止めを使うとよいでしょう。日焼け止めは特別に効果の高い製品でなくてよく、SPF15~30、PA++~+++の製品で十分です。2~3時間毎に塗り直すことをお勧めします。

【4】ざそう様皮疹について

分子標的薬、特にEGFR阻害薬を使っている場合に、ざそう様皮疹と呼ばれる、ニキビのようなぶつぶつが肌に生じることがあります。この場合も普通の肌と同様に、洗浄剤を軽く泡立て皮膚を強く擦らないようにして洗うようにします。ただし、あまり優しく洗いすぎると、肌につけた軟膏や汚れが落ちないことがあるので注意してください。

男性が皮疹のある肌のひげを剃る場合は、より肌を傷つけないようにするため、T字剃刀よりも電気シェーバーを用いることをお勧めします。電気カミソリは、肌の上を滑らせるのではなく、垂直に押し付けるようにして使用する方が、肌を傷つけません。また、ひげそり後は保湿クリームなどで肌を保護するようにします。

3.ネイルケア

化学療法を行うことで爪に変化が現れることがあります。例えば、白い横線や黒い筋がはいったり、あるいは爪自体が黒褐色への変化することもあります。色だけの変化であれば、通常痛みはありません。爪が脆く割れやすくなることもあります。また、タキサン系の薬剤では、爪の間から浸出液がでたり、血豆のように爪の下に出血した跡が黒くなることや、爪が浮いてきて、しばらくすると自然に爪がとれてしまうこともあります。このような変化が起きた時は、まずは主治医か治療を受けている病院の看護師さんに相談してください。多くの場合、治療が終了すると元に近い爪が伸びてきます。

【1】色の変化への対応

爪の色が変化した時は、市販のネイルカラーを塗ってカバーする方法が勧められます。黒褐色の変化には、レンガ色のような赤褐色を用いると変色をカモフラージュしやすいのですが、好みに合わない色をつけているのもストレスです。自分の好きな色を2~3回重ねて塗布するだけでも十分であり、多少変色が透けて見えたとしても、マニキュアをしているだけで手の手入れが行き届いて見えます。

〇使用するネイルカラーや除光液の種類について

特別な製品を使う必要はなく、ごく普通に街中で売っている製品を使って問題ありません。がん患者に向けた爪に優しいとうたった製品もありますが、その優位性を確認できるエビデンスは今のところ見出せません。また除光液を必要としない水溶性ネイルカラーという製品も販売されていますが、除去にアルコールを使用することもあるので、アルコール過敏の患者さんは注意が必要です。アセトン入りの除光液の使用を躊躇する患者さんもいますが、週一回程度の使用で、除去後にクリームやオイルでケアをすればほとんど問題ありません。

【2】爪が薄くなった時の対応

薄く脆くなった爪は、爪切りよりも爪用のファイル(やすり)で長さを整えます。乾燥すると、亀裂や割れがでやすいので、ハンドクリーム等をこまめに塗布するようにします。ネイルカラー(色がつくのが嫌であればトップコートやベースコートなど透明なものを使います)などを塗布して保護・補強しておくと日常生活が送りやすくなります。この場合、最初に3~4回塗り重ね、その後1日1回塗り重ねると層が厚くなり補強になります。1週間に1度程度除去し、また塗るようにしてください。

【3】亀裂、剥離、脱落への対応

爪が脆くなり、割れやすくなったり亀裂が入ることがあります。小さな亀裂であれば、ネイル用グルー(接着剤)で接着すると生活しやすくなります。また、タキサン系の薬剤で治療した場合に多いのですが、治療がすすんでしばらくしてから、爪が浮いてきたり、脱落することがあります。この場合は自然にとれるまで絆創膏や傷テープなどでとめておいてもよいです。手指の場合、頻繁に手を洗うので、濡れても不衛生にならないよう通気性のよい製品を用いるようにしてください。

【4】爪の変形への対応

爪が脱落した後、爪の形が悪くなったと気になる人もいます。その場合はネイルチップ(つけ爪)を用いてカバーをする方法があります。ネイルチップは爪型に成形された樹脂で、爪甲に専用の両面テープで貼付けて使用します。一日使用したら爪から外す必要がありますが、チップ自体は複数回使用することができます。手を洗う回数が多いと両面テープの粘着力が下がり取れやすくなるので注意が必要です。

【5】ジェルネイルについて
ジェルネイルとは硬化性樹脂を用いて自爪の上に義爪を形成する方法で、普通のマニキュアとは異なり、数週間に渡ってその状態を維持できるので人気があります。今まではネイリストによる施術が主でしたが、最近では手軽に自分で行える製品も多く販売されるようになりました。しかし、ジェルネイルは装脱着時に爪を削ることが多く、がん患者の薄くなりやすい爪には負担になります。また健康な人が使用しても、樹脂によるアレルギーの報告や、長期間の装着で義爪と爪甲の間にカビや細菌の繁殖が起きることが報告されています。何よりも、ジェルネイルは数週間装着したままであることから、その間、爪甲・爪下の状態を観察できず、気づかないうちに、爪の下に炎症がおきたり、膿がたまったりすることが心配されます。このような問題があることから、現時点では化学療法中の爪の変化に対し、ジェルネイルを使用することは勧められません。

4.メイクアップ

抗がん剤によっては、肌色が黒ずんだり、前述のざそう様皮疹のように肌にぶつぶつが出ることがあります。こうした皮膚のトラブルを化粧で隠すこともできます。また、眉やまつ毛の脱毛もメイクアップでカバーすることができます。

 

メイクをするときは鏡の位置に注意しましょう。肌にトラブルがあると、つい気になって10数センチ程度の非常に近い位置から鏡を見て、「ひどい状態だ」と悩みがちです。しかし、他人はそれほど近い位置から見ることはありません。社会的な対人距離と言われる、1.5~3m程度離れた位置から鏡で状態を確認すると、意外と気にならないということも多いのです。メイクをするときは、近い鏡だけ見て行うのではなく、他人の目から見たらどう見えるかも確認しながら行うとようにします。

 

【1】肌の黒ずみ

肌色がくすんだり、黒ずんできた時は、ファンデーションをつけるとある程度はカバーできます。肌色を白く見せようと、明るい色のファンデーションをつけるのではなく、ちょっと日焼けした位のいつもよりも色の黒いファンデーションの色を選ぶ方が、変化が目立ちません。また、ファンデーションでカバーした上にピーチ系やコーラル系のほほ紅を用いて血色を加え、肌全体を健康的な色に仕上げると比較的自然に仕上がりやすいです。

色の変化が著しく、一般に販売されているファンデーションでカバーしきれなかったり、色が合わないときは、あざややけどの跡を隠すために使われる特別なファンデーションを用います。

【2】紅斑・皮疹への対応

分子標的薬による紅斑・皮疹について、一般に化粧は勧められないとされることが多いのですが、その根拠となる化粧の影響ははっきりしていません。皮疹が目立つまま生活することが耐え難い苦痛となることもあるので、その場合は化粧してよいか医療者に相談し、良い方法を検討してみましょう。赤みを隠すだけでも気にならなくなる人もいます。肌をこすらず使える、パウダータイプのファンデーションやおしろいをブラシで軽くつけたり、柔らかいリキッドやクリームファンデーションを軽く肌にのせるように塗布します。
皮疹の凹凸をカバーしたいときには、あざややけどの跡を隠すために使われる特別なファンデーションを使うのも方法です。いずれの場合も、使用後はクレンジング等を用いて丁寧に化粧を落とし、スキンケアをしてください。

5.乳がん術後の被服について

乳がん術後の下着については、再建をするかしないか、また再建の方法によっても違います。

病院から指示があった時は、それに従ってください。

【1】手術のすぐあとの時期

まだ、手術のきずが落ち着いていないので、体型補整用の締め付けのきつい下着やワイヤー入りの下着では、きずに擦れたり、締め付けが負担になりやすいです。下着については専用の製品もありますが、手持ちの下着の中でも、柔らかめ、大き目のものを使ってもよいでしょう。その際、肌へのあたりが気になるときは以下の方法を試してみてください。

 

・直接手術の傷にブラジャーが擦れないよう、薄いキャミソールを先に身に着け、その上から、ブラジャーを緩めにつける。

・カップ付きキャミソールを裏返し、滑らかな面が肌に触れるようにして着る

・ワイヤーのないスポーツブラや締め付けのないリラックスブラを使う

乳がん患者向けの下着も販売されています。

 

胸のボリュームがある人では、左右の胸の大きさの違いが気になることもあります。その場合は、ハンドタオルなどを折って形を作りブラジャーの中に入れて整えるとよいです。手持ちのブラジャーなどからパットを抜き、何枚か重ねて使う方法もあります。この時期に専用のパットを使うのなら、柔らかい素材の軽いものを選ぶようにします。

 

術後、放射線治療を受けるときは前あきのブラジャーがあると、治療の時に手早く前が開けられ便利ですが、専用品を絶対に用意しなければならないわけではありません。前あきのブラジャーは、普通の下着店では扱いが少ないので、ネット通販等で購入する人が多いようです。

【2】きずが落ち着いたら(術後1~2カ月後)

切除のきずや乳房の腫れが落ち着けば(痛みなどが気にならなければ)、手術前に持っていた下着を使うこともできます。乳房の形を整えたり、体のバランスをとるために、ブラジャーの中にパットを入れて使う人もいます。パットには、乳房と同じような重さのあるシリコンパットもあれば、軽量のウレタンやスポンジでできたパットもあります。患者さんの中には、ジェルタイプの保冷剤をいくつか重ね、ハンカチなどで包んで使う人もいます。

【3】その他

〇水着について

水着の中には、そでぐりや背中が大きく開いており、傷がみえてしまうタイプもあります。気になるときは袖のあるセパレートタイプの水着を選ぶとよいでしょう。水着の中に使えるパットも販売されています。見た目のバランスが気になるときはパットを入れて補整をしてもよいでしょう。

 

〇温泉に入りたいときは

温泉でリラックスしたいけれど、人目が気になるという場合は、貸し切り温泉や乳白色の温泉、洗い場が個別ブースになっている温泉を選ぶと気持ちが楽です。ファミリー向けの温泉だとお子さんの視線が気になるという人もいます。最初は人気の少ない落ち着いた大人向けの温泉を選ぶとよいかもしれません。気の置けない家族や友人と一緒に入浴し、人目の盾になってもらったのがよかったという人もいます。脱衣所から浴室までは、タオルで前を隠して入ったという人が多いようです。

 温泉に入りたいからと、人工乳房を希望する方もいますが、高額であること、接着剤等で張り付けなければならないこと、また、体が温まって肌の色が変わっても、人工乳房の色は変化しないので完全に見た目が同じというわけではないこと、などを理解して購入するようにしてください。

 胸に何もないのが気になるという人では、貼り付けタイプの乳輪乳頭を使う人もいます。
また、施設によっては、入浴着をつけて入浴できるところもあります。エピテーゼや入浴着については、使うことで安心したという人もいれば、逆に目立ってしまうからいやだ、自分は気にならないからそのまま普通に入ったという患者さんもいます。どちらでも間違いではないので、ご自分の気持ちが楽になる方法を選んでください。

引用・参考文献

  1. 野澤桂子・藤間勝子編.臨床で活かすがん患者のアピアランスケア.東京,南山堂,2017

  2. 日本がんサポーティブケア学会編.がん治療におけるアピアランスケアガイドライン2021年版.東京,金原出版,2021.

  3. 国立がん研究センター研究開発費がん患者の外見支援に関するガイドラインの構築に向けた研究班編.がん患者に対するアピアランスケアの手引き2016年版.東京,金原出版,2016

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このリーフレットは横浜市、横浜市内でアピアランスケアに取り組む医療者、国立がん研究センター中央病院が協力して作成したもので、個人や医療従事者の使用を目的として作成されています。商業目的(物販やサービス販売)での配布や内容の引用はご遠慮ください。
患者会等で使用をご希望の方は、事前に下記までご相談をお願いします。
 ・国立がん研究センター中央病院アピアランス支援センター
 ・横浜市医療局疾病対策部がん・疾病対策課 (045-671-2721)

お問い合わせ

このページの担当は 医療政策部 医療政策課 がん対策担当(03-5320-4389) です。

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